【トレーニング】5000mで14分台を出す・15分を切る方法を考えてみる
高校・大学で陸上長距離をやっていれば、5000mを14分台で走れることは1つのボーダーラインになると思います。
通過点であったり、何とかしてでも達成したい目標でもあったり、競技者によってさまざまだと思います。
人によっては「マラソンペースじゃん」と感じる人もいれば、「大学の推薦いけるんじゃね?」と思う人もいるでしょう。
過去の自分にとっては
「できっこない。でも、人生で1回は14分台で走ってみたい。」という憧れのタイムです。
実際に、14分台で走れたときは疲れているのにスキップしながら帰る、というくらいウキウキな気分になったのを覚えています。
だから、今は体重が戻った後は、もう一度5000mを14分台で走れるように頑張っていきたいと思います。
また、今は競技場が使えない状況が続いているので、満足に練習できない人も多いと思います。
こういうときだからこそ、練習メニュー1つ1つの意味を深く知って、どういう練習をすれば良いのか考えてみるのが良いと思います。
「練習メニューの意味を知る」→「練習メニューを実施する」→「練習の効果を実感する」
というフローを経て、経験を積み重ねることで、今の自分に合った最適なメニューを立てられる。自発的に、積極的に練習に取り組めると思います。
僕の場合、トップ選手の練習メニューとかを見るとワクワクします。今できる環境で応用できるものがないかを考えるだけで、モチベーションが上がります。
いつかベストな環境・コンディションで走れるときがきたときに、一発かましてやるために。
過去に14分台で走ったときの練習メニュー
詳細は過去記事を見てみてください。
このときは、1000mをどれだけ2分50秒以内で走れるか、というのを意識していました。5000mよりも1500mで3分台を出したいと思っていたので、2分40秒前後のペースを「速い」という感覚から「普通」にするためにやっていました。
なので、400~1000mの練習は今見ても、かなりペースが速いと思います。
一部抜粋します。
・600*5(93”)+200*4(31”)
・1000*5(r=600jog 5')2'53-2'53-2'53-2'53-2'46
・1600*4(3'08/㎞)5'00-5'00-5'00-4'47
・1000*5(r=600jog 5')2'48-2'48-2'48-2'48-2'42
・1600*3(3'05/㎞)4'56-4'56-4'56"
・1000*3(r=600jog 5')2'45-2'45-2'41
・400*4(r=400jog 3')62"-62"-62"-62"
良かったこと
このときは、1000mを2分45秒以内で3本できたこともあり、1000m3分がかなりゆっくりに感じていました。「きついけど、無理じゃないペース」みたいな感じです。
3000mを超えた後は流石にきつくなりましたが、3000mを8分58秒で通過したときに、死に物狂いで3分ペースを死守しようと思いました。死ぬかと思いましたが、15分切れた高揚感でプラマイめっちゃプラス。
ポイント練習以外でもジョグをしっかりやっていたので、5000mを走れる体力があったんだと思います。(仕事の行き帰りでトータル12km)
改善点
今だったら、3分ペースで1000m×5本、800m×6~7本をRest3分以内でもっとこなすと思います。1000mを3分ペースで余裕を持ってこなし、少しずつインターバルを短くしていくことで、5000m15分フラットで走れる再現率が上がると思います。
このインターバルを主軸に、400mのショートインターバル、1600m~3200mのLTペース走を行うことで、スピードとスピード持久力を養うことで、確実性が増すと思います。
特に重要なのがLTペース走
ランニングをしていると、一定のペースを超えると急にしんどくなるポイントがあります。これは、特定の強度を超えると血中の乳酸濃度が一気に高くなることが原因です。
この血中の乳酸濃度が一気に高くなるポイントを「閾値」=「LT値」、このときのペースを「閾値ペース」「LTペース」「Tペース」と呼びます。
このLTペースで走ると、血中の乳酸を除去する能力を高めつつ、乳酸を処理できる濃度に抑える役割があります。
つまり、LTペース走を行っていれば足が重くなりにくくなるのです。
ここでいう専門的持久力のことですね。
LTペース走はダニエルズ先生曰く、20~30分間は走れる快適なきつさのランニングです。速く走っていてある程度長く走れるけど、まぁまぁきついペースです。(アバウト)
「調整を行えば、トップ選手だと60分間は走れるペース」ということなので、ハーフマラソンのレースペースとして設定されることが多いです。
スピード練習とペース走だけだと失速するかも
5000mのレースペースは、LTペースよりも速いので乳酸に耐え、除去する能力が低いと途中で失速してしまうわけです。
高校のときは、このLTペース走の概念がありませんでした。耐乳酸トレーニングとしては、1000mを3本600mジョグ繋ぎでやることが多かったです。これでは、乳酸にある程度耐えられたとしても、1000m以上走ったときに失速してしまいます。
他の練習は8000m~12000mのペース走、200m×10~15、400m×10~12、1000×5などです。
インターバルトレーニングやペース走では、スピード・最大酸素摂取量・基礎持久力などは向上しても、乳酸を処理する能力は養われないのかもしれません。
14分台を出したときの練習を振り返っても、LTペース走は少なかったし、距離も短い。
具体的な練習メニュー
LTペース走の内容ですが、基本的にはインターバルトレーニングとペース走(テンポ走)の間らへんの距離とペースで走ります。
走る距離は 1.6㎞(1マイル)~6.4㎞(4マイル)、最初は負荷が高いので短い距離を短いインターバルで繰り返す「クルーズインターバル」を行うのがおすすめです。
【練習例】
・1.6㎞(1マイル)×5 Rest:1分
・3.2㎞(2マイル)×2+1.6㎞(1マイル) Rest:2分+1分
実際に、どれくらいのペースで走れば良いのか、ここから触れていきます。
練習の目安になるペース
毎度お馴染みの『Jack Daniels' VDOT Running Calculator | Run SMART Project』
VDOTによるタイムは、「目標のペース」ではなく「現時点での走力を基準にしたペース」です。そのため、どう頑張っても5000m16分台の人は練習をこなすことができないでしょう。
そのため、今のペースをしっかりと把握した上で、余裕を持ってこなせるようになったら、目標のペースに徐々に近づけていくのがおすすめです。
まずは、計算機をつかって今の自己ベストに最適なペースを割り出し、目標達成に向けて計画的・段階的に設定ペースを上げていきましょう。
重要なことはランニングエコノミ―
あくまでも個人的な見解ですが、5000mを安定的に14分台で走るためには、ランニングエコノミーを意識することが大切だと思っています。
ランニングエコノミ―には2つあって、「ランニング時に体内のエネルギーを効率良く使う能力」と「効率良くランニングする技術(主にランニングフォーム)」です。
1つ目は、ミトコンドリアが云々という少し難しい話になるので詳しく知りません。まぁ、トレーニングしていれば筋肉とか以外も変わって効率化がなされるということです。
重要なのは2つ目。簡単に言うとランニングフォームです。
ランニングエコノミ―の高め方
5000mを速く走るためには、効率が良いランニングフォームで走るのがポイントであり、ランニングフォームを習得するためにはスピード練習ありきです。
スピード練習をすればスピードが磨かれていきますが、筋肉などが変化するだけでなくランニングフォームも次第に最適化されていきます。
注意したいことは『オーバーペース』
5000m14分台を目指すとき、「とにかく設定ペースを上げたい」と焦っていたのも事実です。確かに、ペースを上げれば自己ベストが出る手ごたえがあって達成感も高いです。実際に足は速くなったと思います。
ただ、設定を無視したペースで走ると、練習の途中で失速してまともに走れなくなります。失速するとメンタルに大きなダメージがありますが、それだけではありません。
フォームが崩れます。
計算機で算出したVDOTのタイムをそのまま実践してはいけないのは、5000mを14分台で走ることを目指している人にとってはオーバーペースだからです。
オーバーペースで走り、フォームが崩れるとランニングエコノミ―は高くなりにくいです。
1000×5本などのインターバルは設定ペースをしっかり守り、その後の200~400mのショートインターバルを数本(2~3本)入れるというセット練習がおすすめです。
非常に参考になったのは↓の記事です。
洛南高校では1000mのインターバルを3分~3分05秒で実施していますが、5000m14分10秒台や20秒台が出ています。
※もちろん、1000m3分よりも速いペースのショートインターバルも実施しています。
具体的な練習案
()内はペースとRestです。
・ショートインターバル(Repetitionペース)
200m×10~15、400m×10~15(次の距離ジョグ)
・インターバル(Intervalペース)
800m×6~10、1000m×5~8(400mジョグ)
+200m×2~3(Rペース)(次の距離ジョグ)
・クルーズインターバル(LTペース)
1.6㎞×5(1分)、3.2㎞×2+1.6㎞(2分、1分)
・ペース走・テンポ走(Marathonペース)
8000m~16000m
おすすめのセット練習(ダニエルズのランニング・フォーミュラを参考)
・4.8㎞(LT)+200m×4(R)+3.2㎞(LT)(200ジョグ)
・1.6㎞(LT)+3.2㎞(LT)+1.6㎞(LT)+200m×4(R)
(2分、1分、200ジョグ)
・(200m+200m+400m)×4~5(R)(200ジョグ、200ジョグ、400ジョグ)
他にもペース走の間にLTペースで1マイル挟むのもおすすめです。
【参考書籍】
そもそも、有酸素能力が十分に鍛えられているか?
5000mは高い有酸素能力が求められる競技です。有酸素能力が高くないと、LTペース走やインターバルのトレーニング効果が向上しません。
有酸素能力が高いと、体内の血管が発達しより多くの酸素を効率良く運ぶことができます。また、細胞内のエネルギーを生み出すミトコンドリアの数も増えます。
インターバルやレぺテーションなどのスピードトレーニングは、ミトコンドリアの性能を高める効果があるため、ミトコンドリアが増えた状態で行った方がトレーニング効果は高くなるのです。
無酸素能力を高めるトレーニングは、筋肉だけでなく内臓などにも大きな負担をかけるため、連発していると故障だけでなく体調を崩したり、モチベーションの低下を招いたりします。
5000mで結果を残したい場合は、基礎体力の土台を作るためにロングジョグを一定期間行うことが大切です。※理想は120分~150分、週に160km
細かい仕組みなどはこちらから。
レースではスパイクを履く?シューズを履く?
5000mは長い距離を走るため、なるべく脚の負担を軽くできるように考えることが大切です。例えば、スパイクを履いていてラストスパートができなかったり、脚が重くて後半失速する場合は、スパイクが負担になっていることがあります。
しかし、シューズの規定が変わったことにより、25mm以上の厚さのシューズは使えなくなりました。そのこともあり、現在のシューズメーカーは厚底中心のシューズを扱うようになっています。
もし、スパイクの負担が課題の方は、少ない選択肢の中から薄底のシューズを選ぶか、負担が少ない長距離用のシューズを選びなおすのが良いでしょう。
●アディゼロタクミセン(アディダス)
タクミセンはWAのシューズ規定でもトラックでの使用が認められています。今までよりもミッドソールに使われているマテリアルが大きく変わり、中足部のプレート(トリションシステム)によって安定感や反発力が高くなっています。
ロードレースだけでなく、5000m・10000mのトラックレースやスピード練習でも活躍するシューズです。
※アディゼロタクミセン8について
同シリーズの最新モデルである「タクミセン8」は、従来のシリーズから大幅なモデルチェンジが行われました。
アディオスプロで使われている「Lightstrike Pro」をフルレングスで使用し、エナジーロッドも入っているため、アディゼロアバンチをシューズにしたようなモデルです。
ただし、ソールの厚さは3.1cmであるためトラックレースでは使用できません。
●アディゼロ アバンチ(アディダス)
同じくアディダスのスパイク「アディゼロ アバンチ」。2017年・2019年の世界陸上5000mで2連覇したエチオピアのエドリス選手が履いているスパイクです。
ソール全面にクッション・反発力が高いブーストフォームが使われており、脚の負担を抑えられるので速いスピードを維持しやすいです。
ドラゴンフライ以前は、多くのナイキユーザーが使っていた長距離スパイク。履き心地はスパイクというよりかはシューズに近い感覚で、とにかく軽い(25.5cmで99g)。
ドラゴンフライが手に入りにくい状況なので、それまではマトゥンボで頑張るのもアリだと思います。
最後に
5000m14分台を目標にするときは、1000m×5本のインターバルを3分~3分05秒でしっかりこなせるようにして、400mのインターバルを66秒前後でできるのが1つの目安になると思います。
そこに普段からLTペース走を実施して、乳酸除去・耐乳酸能力が高まれば確実性は増したくるでしょう。
また、ランニングエコノミ―を高めるためには、体幹を鍛えてブレない軸を作ることも大切です。体幹トレーニングなら自宅でもできるので、ガンガンやっていきましょう。