市民ランナーが5000m13分台で走れるのか試してみた。

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【トレーニング】800mの練習で大切なこと

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800mは非常にハードな種目であり、練習の組み立て方も難しいです。高校生のころまでは800mを専門でやっている選手は少ないですが、800mを主戦場にしている選手は強いです。

800mで強くなるためには練習するしかありませんが、その練習に取り組む中でいくつ大切な考え方や知識などのポイントがあります。今回は、800mの練習をする上で大切なポイントについて紹介します。

はじめに

このページを今読んでいる方は

「800mに取り組んでいてタイムを縮みたい」

「800mのレースに出ようか考えている」

という方が多いと思います。

自分でいうのもなんですが、厳しい種目を選んだと思います。実際に800mは他の種目と比較しても少し特殊です。また、800mをやっていると「一番きついやつだ。」と言われることも多いです。こう思われるのも、間違ってはいないでしょう。

※個人的には400mH、3000m障害、20K・50K競歩も十分にきついと思いますが。

でも、800mはきついだけでなく、駆け引きやポジション取りなどの戦略も重要で、自己ベストを出したりレースで勝ったりしたときの達成感も大きな種目だと思います。

800mに取り組んでいれば、走るだけでなく見るのも楽しくなります。

800mについてどう思っているか?

まず、練習を始める前に前提として自分が800mについてどう思っているかが大切です。別に好きでなくても良いのですが、800mに対するマイナス感情が大きい人の場合、練習やレースにかける時間がもったいないです

他の種目の練習する時間にあてたり、学生であれば勉強する時間に使ったりした方が良いと思います。なぜなら、800mはレースだけでなく練習もきつくハードなものが多いからです。

「800mが好きである」

「800mでどうしても突破したいタイムがある」

「800mで勝負して勝ちたい」という方であれば、日々のハードな練習でも耐えられると思います。今回の内容もそのような方向けに書いています。

もし800mという種目が嫌いで、顧問の先生に言われてやっている方の場合は種目を変更するのがおすすめです。

1500mのサブ種目として800mを仕方なく走る方であれば、怪我のリスクが高まるので800mはやめて1500m1本に絞った方が良いでしょう。もしくはスピードを活かせる練習をしつつ、5000mをサブにした方が良い場合もあります。

400mがメインで800mを走っている方であれば、サブの種目は200mにした方が400mの競技力向上に貢献すると思います。

何か目的や志しのようなものがない方にとっては、800mという競技はきつすぎるからです。800mに対してマイナスな感情が大きい場合、おそらく練習にかける時間・それに伴う苦しみや辛さ、これらに対して得られるものが圧倒的に少ないでしょう。800mに対する前提がすでにマイナスなのであれば、「楽なトレーニング」しか選ばなくなるなど、得るものが少なくなります。

1本1本の練習にマイナスな感情がある場合は、何か特別な才能のようなものがない限り、おそらくタイムの伸び率も微妙になってしまいます。

800mのタイムを効率良く縮めたい方は、まず800mという競技を好きになる(というか結果を出したいと強く思う)のが近道だと思います。

「なぜ800mを走るのか」を考えるときは、できるだけ「良かったこと」を思い出してみてください。例えば、自己ベストを出したとき、勝負に勝ったときなど嬉しかったことです。

練習やレースはどっちにしろきついのだから、ストレスを感じるのではなくモチベーションを高められるようにするのがおすすめです。

レース動画を見てモチベーションを上げる

手っ取り早くモチベーションを上げるには、面白い800mのレース動画を見るのがおすすめです。走り方が参考になりますが、それ以外に「少しでもいいから、こんな風に走ってみたい。」 と感じられれば、もうモチベーションは上がっていると思います。

「今日の練習きついな。。。」と思うときにもレース動画を見て気持ちを高めるのもおすすめです。 

800mの世界記録

Rudisha Breaks World Record - Men's 800m Final | London 2012 Olympics - YouTube

高校生が日本選手権を制覇

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ギタウ・ダニエルvs横田真人

小柄なイエゴ選手が勝利

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有酸素能力が占める割合は60%

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800mはスピードが求められる競技ですが、実は有酸素能力が占める割合の方が大きく約60%ほどといわれています。そのため、トレーニングの内容もスピード練習のような無酸素トレーニングだけでなく、有酸素トレーニングも行うのが良いでしょう。

この800m選手の有酸素トレーニングの必要性は、昔から長く議論されているポイントです。実際に、選手の特性による部分は大きいです。例えば、元日本記録保持者である横田真人さんは、現役時代にほとんどジョグはしなかったそうです。しかし、 同世代の口野武史さん(1分46秒71)の5000mのベストタイムは14分台だったそうです。

このように選手によって異なりますが、今よりもタイムを伸ばしたい方(伸び悩んでいる方や突破したいタイムがある方)にとって有酸素能力は無視できない要因になるでしょう。

有酸素能力の不足は失速の原因の1つ

有酸素能力が低い選手が前半突っ込んだ走りをした場合、自己ベストを出そうとLT値(乳酸が急増するポイント)を大幅に超えるスピードで600mまで走ることになるため、この時点で体は限界を迎えてしまいます。そうなれば、ラスト200mは乳酸が溜り酸素を十分に供給できず失速してしまいます

例えば、800mを200mごとに30秒ー30秒ー30秒ー36秒で2分06秒で走った選手の場合、ペースが速すぎるか、600m時点で無酸素状態の限界に突入しているといえるでしょう。

ラストスパートを決めるために必要な要素でもある

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800mのレースにおいて、ラスト200mのタイムは最も遅いことがほとんどです。その中で、ラストスパートを決めて自己ベストを更新したり、勝負に勝ったりするためには有酸素能力が必要なのです。ラストスパートが決まっている選手は、スピードが上がっているわけではなくスピードを維持していることが大半です。

有酸素能力が高まることで、乳酸が発生するポイント(LT値)も高まります。(より速いスピードで走っても乳酸が発生しにくくなる)

800mだけでなく1500mなどの中距離種目も同様ですが、高い有酸素能力があればラスト200m(ラストスパートをかけるタイミング)でも無酸素状態のレベルが低い状態に持っていけます。そうすれば、ラストの局面を余裕がある状態で迎えることができ、スパートをかける(失速せずにスピードを維持する)ことができます。

無酸素能力の発達には限界がある

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800mのトレーニングでメインになるのは、600+200や300+300+200、400×2などの無酸素系のセット練習です。しかし、無酸素能力の発達には明確な限界があるといわれているため、年間を通して無酸素系のトレーニングをずっと継続していても、能力の成長は頭打ちになってしまいます。

もし、無酸素系のトレーニングをずっと行っていて、タイムが伸び悩んでいる場合は練習の組み立てを変える必要があるでしょう。 

練習する上で押さえておきたいポイント

800mの練習をするときにはいくつか押さえておきたいポイントがあります。このポイントを押さえることで、故障するリスクを抑えて効率良くトレーニングできます。 

今の自分のレベルに合った設定タイムで走る

レーニングの設定タイムは目標タイムに合わせるのではなく、今の自分のレベルに合わせることが大切です。例えば、今の800mのタイムが2分05秒で目標が2分切りの場合、200mのペースを30秒(目標タイムのイーブンペース)でトレーニングしている方は多いでしょう。

しかし、実力よりも速いペースでトレーニングを行うことで、終盤に限界が来てしまい十分なトレーニングを行えません。失速した状態でランニングを継続することで、フォームが崩れたり怪我するリスクが高まったりします。

今の実力に合ったペースでトレーニングし、もし余裕があるのであれば全力(オールアウト)で走るのではなく、本数やセット数を追加するのがおすすめです。次に同じ練習を行うときに、また余裕を持って行うことができたら設定ペースを上げると良いでしょう。 

無酸素トレーニングのデメリットを知る

無酸素トレーニングは800mの結果に直結する練習です。

※有酸素系のトレーニングも重要ですが、それだけでは競技力は向上しません。

そのため、800mの多くのメニューではほとんど無酸素トレーニングです。しかし、無酸素トレーニングは体に与える負担が非常に大きいためデメリットもあります

まず、無酸素運動を行うと乳酸と一緒に水素イオンが生まれ、体内が酸性になります。体内が酸性状態だと筋収縮が阻害されるため、体が動きにくくなります。さらに、この酸性状態が続くことで、有酸素運動で増えたミトコンドリアが破壊されたり、栄養を上手く吸収できなかったりします。

他にも免疫力の低下や内臓系にも悪影響を及ぼし、故障や病気になるリスクが高くなります。また、この状態が続くことでモチベーションの低下も起きます。

過度な疲労状態ではスピードも出なくなるため、練習効率も悪くなるでしょう。無酸素トレーニングをした後は、体を十分に回復させるために、次の無酸素トレーニングまで最低でも48時間空けることが大切です。

十分な準備期間を設けて段階を踏んでトレーニングする

自己ベストを狙うために基礎から見直してトレーニングに取り組むのであれば、少なくとも6ヶ月(24週間)ほどの期間を設けるのが大切です。

レーニングを行うときは、 以下の4つの期間を設けます。

①有酸素トレーニング(走り込み期)

②筋力強化トレーニング(無酸素トレーニングの準備期)

③無酸素トレーニン

④コンディショニングトレーニン

有酸素トレーニングで十分に有酸素能力を高めることで、体力の土台を作りつつ怪我するリスクを低くします。筋力強化トレーニングは、基本的に有酸素トレーニングと同じようなトレーニングをしながら、ヒル・トレーニングやペースが遅いインターバルトレーニングをなどを行います。

無酸素トレーニングではインターバルやレペティショントレーニングを行い、コンディショニングトレーニングでは、レースで力を発揮するためにタイムトライアルやセット練習などを行います。 

まず走り込み期で有酸素トレーニングを十分に行うことで、エネルギーを生むミトコンドリアの数や酸素を運搬する道路である毛細血管が増加します。無酸素トレーニングは、体内のミトコンドリアの性能を高める効果があるのも特徴です。

そのため、ミトコンドリアの数が少ない状態で無酸素トレーニングをするよりも、有酸素トレーニングを十分に行ってミトコンドリアの数を増やしてから無酸素トレーニングを行った方が効率が良いのです。

改めるべきは生活習慣

競技者であれば誰でも、今よりも良いトレーニングを望みます。おそらく、このページを見ている方の多くは、現状を突破するためのヒントを得たいと考えていると思います。

しかし、現状を変えるために何か新しいトレーニングを行うことだけでなく、質の高いトレーニングを日々行うことも大切です。むしろ、トレーニングの内容を変えるのではなく、生活習慣を改めて質の高いトレーニングを積んだ方が、自己ベストに近づくでしょう。

しっかり睡眠を取ること、栄養を摂ること、体の負担になることをしない(長時間座る、負担がかかる体勢を続けるなど)など、細かいことですが普段の生活の中で意識することで、練習の質は改善されると思います。

最後に

今回は800mのトレーニングで重要なポイントだけをピックアップしました。それぞれのポイントの詳しい内容については追って更新したいと思います。

参考書籍 

今回の内容と普段のトレーニングの参考にした書籍を紹介します。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ

長距離を中心に書かれていますが、800mについても盛りだくさんの情報が載っています。トレーニングの原理や期分けなどの練習する上で重要な知識を得られるため、練習の役に立つと思います。

何よりも具体的な練習メニューと現在の自己ベストに合わせた設定タイムも記載しているので、練習メニューを自分で作成している人にはとてもおすすめです。

リディアードのランニング・トレーニン

有酸素トレーニングについてかなり詳しく書かれています。長距離選手向けですが、800mのトレーニングにも役立つ知識があるため、読んで損はありません。特に競技力を高めたい人、ラストに失速してしまう人、普段の練習がきついと感じている人におすすめです。