『ルックバック』で感じたことを整理してみる(メモ)
「ルックバック見た?」
という会話を教室でしたかった。
(たぶん、高校生くらいのときに読んでも、今と感じたものは大きく違うと思うけど)
思ったこと、感じたことを誰かに話したい。
さかなクン先生が言う通り、「この感動は共有しないともったいない」と思ってしまう。
ちなみに母親に読んでもらったところ「よくわからなかった。」という感想だった。
自分はお腹の辺りが変な感じになったけど、人によって感じ方は当然違う。
メモのような内容で、自分の思っていることを整理する意味で書いていきます。
※ネタバレありなので注意してください。無料の間に是非本作を読んで欲しいです。
(画像出典:ジャンプ+)
- ルックバックを読んで体調を崩す
- 共感できる面が多い主人公『藤野』
- 衝撃的な京本の存在
- 京本との出会い
- 2人で漫画を描き始める
- 高校卒業から連載の話が上がる
- そして、事件が起きる。
- 京本視点のシーンへと転換
- ストーリー以外のこと
- 最後に
ルックバックを読んで体調を崩す
少し大げさかもしれない。でも、読み終わった後の衝撃というか、何というか。
感動よりも喪失感に近いものと、他にも色々な感情がぐちゃぐちゃになって胸(胃のあたり)に留まっている感じ。
感じるものが大きくて、色々考えてしまい寝れなかった。
読んだ次の日までは、何となく調子が悪い。消化器系が気持ち悪い。
割と落ち着いたので、ブログで気持ちを整理しようと思いました。
共感できる面が多い主人公『藤野』
主人公の藤野は小学4年生の女の子。
絵を描くのが得意で、学級新聞に自作の4コマ漫画を載せてもらっている。
→後でわかることだけど、かなり長期連載しているので、学内での評判はかなり良かったものと考えられる。
しかも、週間連載で4コマ漫画を2本載せている。
冒頭は、友達に褒められて気分が良い藤野。
自分の過去にも、「あんま勉強してないけど、点数良かったわー。」とか言っているヤツにはかなり心当たりがある(複数人)。
そーいうヤツなんだ藤野は。
この時期(思春期らへん?)って、「一生懸命頑張るのがカッコ悪い。ダサい。」と思い始めることが多いと思う。おそらくこの年齢になると、必死になって努力しても結果が出ないことの1つや2つ経験しているから、ある意味自己防衛としてこのような考え方になるのかな。
陸上のレースの前に、自分から「今日は調子が悪い」とか「練習ができてないから」と言っている選手を見たことは多い。このような言い訳は「セルフハンディキャップ」といい、たとえ失敗しても自尊心が保てるようにするためのものなんだそうだ。
大人になってから分かるけど、しっかりと頑張れるヤツの方がカッコ良い。
たしかに、このときまで藤野はそこまで頑張っていない感じはある。ただ、周囲からは褒められるし、漫画を描くことは自分の中でも特技としての自負がある。
衝撃的な京本の存在
物語の主要人物である『京本』。しかし、中盤までは名前しか登場しないため、どんなヤツかはわからない。同じ学年の不登校の子。くらいしか
この京本に4コマ漫画の枠をゆずることに。
藤野からすれば、得意分野で負けるはずないし、絶対自分の方が面白いし、先に漫画を載せている先輩的なポジションの余裕さを見せるためからか、京本の漫画を載せることにOKを出した。
そして、こんなこと言ってしまう始末。
↓
この表情の変化をページの同じ位置のコマに持ってくるあたりが、分かりやすい対比になっていて印象に残りやすくなっている。あくまでも画風はリアルさを残しながら、ギャグっぽい表情を描けるのは単純に凄いと思う。
子どもってときどき残酷
京本が漫画を載せるまでは、藤野をべた褒めし、サインをねだっていた男の子のセリフ。
正直な感想はときに人を傷つけることもある。
ちなみに、京本が載せた絵は「チェンソーマン」の背景らしいです。
ショックを受けた藤野は、「天才京本」ではなく、「学校サボって絵の練習をしているヤツ」と考える。
→めちゃくちゃ絵が上手い京本を天才のように認めたくないんだと思う。
藤野はかなり偉いと思う
京本の絵の上手さ、自分よりも絵が上手いヤツがいる現実が許せない藤野。
そこで、藤野は本格的に絵の練習を始める。
絵が上手くなるための本を買い、絵が上手くなる方法を調べ、スケッチブックを消費していく。
家にいるときだけでなく、授業中も、友達からの誘いを断って、家でもテレビも見ずに絵の練習をする。と感じる描写がある。
凄いよ。藤野。
ちゃんと自分から行動して、絵が上手くなるための努力をする。タイトルの「ルックバック」ともリンクし、藤野の背中を見せるシーンが見開きで2ページほどセリフなしで描かれている。
時間の経過と一緒に、藤野の真剣さが伝わってくる。
小学6年生で、人の骨格を描いている(勉強している)ヤツがいたらビビると思う。でも、それは大人になった自分の感想であり、同学年にそんなヤツがいたら変な子だと思う気がする。
メンタルを抉ってくる友人と家族(姉)
6年生になると、友達と姉から絵を描くのを辞めるように勧められる。
きっと、将来漫画家になりたいと思って絵を描いている人は、同じようなことを言われているんだろうな。
何かを目指しているときに、邪魔が入ることはよくある。
おそらくこのとき、友人も「藤野はこんなに頑張っているのに、京本の方が凄い。」と感じているのではないかと思う。
小学生の間の藤野のモチベーションは「絵が上手くなりたい。」
→その理由は、京本に絵の上手さで勝ちたいから。絵が好きで楽しくて描いているわけではない。
こういったモチベーションで動いているとき、たぶんそれは苦しみが伴うと思う。
また、京本に勝つことが目的であるので、「あっ、京本には勝てないな。」と思ったら心が折れてモチベーションはなくなってしまう。
実際に、心が折れる。
たぶん、今まで通りに周囲から褒められていれば、やめることはなかったと思う。
京本の存在だけでなく、周囲からの反対が「やめる正当な言い訳」になってしまった。
でも、藤野が描いた漫画の最新版は、4年生と比べるとかなり絵は上手くなっているし、話も面白くなっている。ちゃんと成長している。
ついに漫画を描くのを辞めて、今まで描いていたスケッチブックも捨ててしまう。
京本との出会い
卒業式の日、京本の家に卒業証書を届けるようにお願いされる藤野。
追いつきたくても追いつけない存在。それは、憧れよりも悔しさとか憎しみの気持ちの方が強いと思う。このときは、藤野は京本が大っ嫌いなのだと。
結局、京本の家に行くものの、そこで見たのは圧倒的な努力の証。
部屋に繋がる廊下に何冊も重ねられたスケッチブックが並んでいる。自分と比較にならないほどの量で、少し京本が何で凄いのか(絵が上手いのか)、やっと理解できた、というようなシーン。
よく「凡人は天才の努力をイメージできない。」という言葉を耳にする。
でも、このとき藤野は少し安心したようにも感じる。
自分と同じなんだ。と。
ただ、京本は自分よりも頑張っている量が多い。だから追いつけない。
藤野はスケッチブックの上にあった4コマ漫画の用紙に即興で漫画を描く。紙を落としてしまい、京本の部屋に入ってしまい、それに京本が気づいてしまう。
正直、京本をバカにしたような内容でもあるので、焦って帰る。
それを、引きこもりの京本が追いかけてくる
3年生のときから描いてんだ。
これも、冒頭の男子との対比になっていると思う。
本当にファンだから、憧れの人だからサインが欲しい。
自分のことを「先生」と呼ぶ。
今まで自分が目の敵にしていた相手が、実は誰よりも自分を認めてくれていた。
→藤野は京本のことを凄いと思いつつも、「京本先生」なんて絶対言えない。
→そのことからも、京本が藤野をリスペクトしていることが分かる。
純度100%の褒め言葉。
京本と出会ってから時間は短いけれども、ここまでのやり取りで京本はお世辞が言えるような器用なヤツではないことが分かる。
それに、京本が漫画を載せ、藤野が絵の勉強をした辺りの漫画をべた褒めしている。
→周囲は絵の勉強をするまでは褒めていたのに、絵の勉強をしてからはやめろと言う。
→それに対し、京本は藤野の変化(努力)をしっかり感じ取っていた。
自分のことを分かってくれる人がいる。
めちゃくちゃ嬉しいはずなのに、目線を反らしつつクールに振る舞う。
→その後のコマでも、目を反らしながら会話を続ける。
→子どもが嘘をつくときの仕草であり、漫画の賞を取るためではない。
→実は自分を慕ってくれていて、自分の理解者である人に「お前のせいで辞めた」なんて言えないし、言いたくもない。
めちゃくちゃ嬉しかったんだな。表情のギャップにより、印象に残りやすくなっている。
この部分も、登場していない京本がどのようなモチベーションで絵を描いていたかが分かり、それが藤野との対比になっている。
藤野:京本に勝ちたくて漫画を描く(絵の勉強をする)
京本:藤野に憧れて漫画を描く(絵を描く努力をする)
また、藤野は一度漫画を描くことを辞めているものの、漫画を描きたい気持ちがゼロになったわけではない。その証拠に、京本と出会った日はダッシュで帰って、ネームを描き始めている。
2人で漫画を描き始める
時が流れて中学に入ると、京本は藤野の家に入り浸るようになり、2人で漫画を描き始める。
この漫画、読み切りで143ページあるんですけど。
「藤野キョウ」名義の完成した漫画は入選し、それからどんどん2人で漫画を描く。
基本的には、背景は全て京本が担当し、それ以外のストーリーやキャラは藤野が担当している。
2人で海に行った後は海をテーマにした漫画を描き、セミを見つけたときはセミの漫画を描く。
→まるで、2人の思い出を漫画にしている感じ。
高校卒業から連載の話が上がる
担当編集から連載の打診があり、2人が目指していた夢が実現する。
しかし、京本はもっと絵が上手くなりたいと美大への進学を希望する。
→連載は手伝えないという話しになる。
藤野は背景担当の京本がいなくても漫画は描けるから、最初は「まあ、いいんじゃない」というが、本心は大学に行って欲しくない。だから、ちょっとケンカになる。
→2人で漫画を描きたい。
→2人で漫画を描けばきっと凄い物ができる。と思っていたのに。
京本にコレを言われたら藤野は断れない。
→小学生のときの藤野、その努力を認めた京本が言ったセリフ。
→ここで京本を引き留めたら、たぶん絵を描くのを辞めろと言った家族・友人と同じになる(同じではないが)。
藤野は1人で漫画を描き、結果を残す
結局藤野は「藤野キョウ」名義で連載を進め、単行本11巻、アニメ化が決まる。
→チェンソーマンとの共通点が多い。既刊既刊11巻で、アニメ化が決まっている。
ルックバックではセリフのないコマ・ページが多く、タイトルの通り背中で語るようなシーンが多い。特に時が流れる表現として使われている。
→藤野が1人で結果を出せたのは、小学校のときに努力を続けた土台があるから。
→その後、京本とタッグを組むことで1人でも通用する実力を身に付ける。
そして、事件が起きる。
この事件は、 2019年の京アニ事件を連想させるものがある。
事件が起きてから、一瞬見開きで過去の回想が入る。
シーンから、初めて2人で描いた漫画が受賞したことを、コンビニに確認した帰りだと思う。(中学生のとき)
→このタイミングで回想を挟むことから、「いつか2人で凄い漫画を描く」という強い気持ちが伝わってくる。
→藤野が「藤野キョウ」名義で連載を続けている理由は、京本がいつでも合流できるように。だと思う。
しかし、事件により京本は亡くなってしまう。
→藤野が思い続けていた夢が、永遠に叶わないものになってしまう。
そして、藤野は後悔する。
京本の死後。このシーンで初めて藤野は涙を流す。
京本視点のシーンへと転換
藤野は自分が描いた4コマ漫画を破った後、シーンが過去に戻る。
いわゆる「もしも」のストーリーであり、小学校の卒業式で藤野と京本が出会わない世界線?である。
あのとき、藤野と京本が出会わなくても、京本は美大に進んでいた。
→だから、藤野は悪くないよ。というメッセージと感じ取れる。
通り魔は付近をランニングしていた藤野がカラテキックで撃退し、京本が助かる未来になっている。
2002年6月11日の学級新聞の漫画は、冒頭の藤野が描いた漫画になっている。
ここから時系列を整理すると、
※事件は2016年1月なので、大学3年生。
※オレンジ色は京本の空白期間。よくよく考えれば、京本は高校に行っていなかったと思うので、大学入学資格を取得する期間だったと思う。
その後、京本が4コマ漫画を描き、それを落としてドアの隙間から外に行き、元のシーンに戻る。
このとき、涙は枯れてしまったのか、少し目が腫れているだけの描写になる。
京本の部屋には、窓に4コマ漫画が貼られており、連載中の漫画の単行本が複数、壁にはポスター、
そして、ジャンプのアンケート用紙がある。
シャークキック超好きじゃん。
このことから、京本も本当は一緒に連載したかったことと感じられる。
→自分で連載を断った手前、絵が上手くなって帰ってくるまでは表立った応援はできない。
→単行本を複数買うのは、保存用や布教用?
→アンケートも描いて応援するのは、やっぱり純粋なファンだと思う。
「じゃあ、藤野ちゃんは何で描いているの?」
以降のページから再度回想シーン。
自分の描いたストーリー(ネーム)を見て、
目をキラキラさせるヤツがいる。
涙をボロボロ流すヤツがいる。
床を転げまわるほど爆笑するヤツがいる。
藤野は京本のために漫画を描いているんだ。
と藤野が再確認したと感じられる。このシーンは、繰り返し読めば読むほど涙が溢れてくる。
きっと、大人になっても、いつまでもこんな風に2人で漫画を描いていたかった。
という気持ちが、涙と一緒に溢れているんだと思う。
そして、京本が好きでいてくれたシャークキックは終わっていない。
→「このつづきは12巻で!」からは、1人でも漫画を進める、進めなきゃならない決意が伝わってくる。
そして、ラストの仕事に戻るシーンで終わり。
ストーリー以外のこと
今回の143ページ読み切りというのは、ジャンプ本誌ではほぼあり得ないことだと思うので、電子版の配信の新しい可能性みたいなものを感じた。
→だからといって、100ページを超える作品を描くのは大変労力がいる。
また、ルックバックを最初に読んで思ったことは、長さを感じさせないこと。
読む前は、正直「140ページとか最後まで読めるかな。」と思っていたものの、実際にはそんな心配はいらなかった。
むしろ、何回読み返してもストレスにならない。とても読みやすく、スラスラと読めるように感じる。
その要因を考えたときに、1つ気づいたのは漫画の中で使われるさまざまな「対比」です。表情やキャラの行動だけでなく、セリフがあるシーンと全くないシーンが良いバランスであり、対比になっているように感じる。
セリフがなくても伝わる表現力も素晴らしい。むしろ細かい部分に何かメッセージがないか、より見入ってしまう。
他にも、クールな藤野と感情豊かな京本。普段はクールな藤野が怒ったり泣いたりしたときのシーンなども、とても印象的だった。
最後に
色々考えさせられるような作品でした。
何か結果を出すためには、努力を続ける必要があるし、それにはモチベーションが必要。藤野の京本に勝ちたいという気持ちや、京本と一緒に漫画を描きたい、京本のために漫画を続けるというモチベーション。
京本の憧れに近づきたいという気持ちや、もっと絵が上手くなりたいというモチベーション。
読んだ後に何か行動したくなります。
また、ストーリーだけでなく、漫画の演出も非常に惹き込まれるものでした。
ちょうど紙で欲しいと思っていたので、単行本化はありがたい。